近頃、消費税率アップを声を大にして唱える新聞が増えてきた。在京六紙のうち、読売、朝日、毎日、産経、日経が消費税率アップ賛成派で、唯一、東京新聞は賛否を明確にしていない。
賛成派の急先鋒は、やはり読売新聞である。
「老いも若きも、広く薄く、福祉財源を負担し合うしかない。そうすれば高齢者層が大きくとも、負担の重さは各世代に幅広く分散される。消費税率を引き上げることによって、必要な財源を確保すべきである。引き上げは段階的に行うとしても、いずれは、欧州諸国の最低水準である15%程度は検討する必要があろう。」(2008年1月11日付読売新聞社説)
「成長率上昇による税収増という、実現性が不確かな要素だけをあてにできる状態ではない。増え続ける社会保障費を考えても、消費税率上げを中心にした財政健全化策の策定は、待ったなしだ。成長政策も問われる。日本企業の国際競争力向上の観点からは、法人税実効税率の引き下げなども課題になる。その実現のためにも、財政的余力を確保する必要があろう。」(2008年1月5日付読売新聞社説)
「もちろん、消費税を大幅に引き上げる際には、食料品など日常的生活必需品については軽減税率の対象とするなどの配慮は要る。新聞、書籍を始めとする知識文化的商品も欧米並みに軽減措置を考える必要がある。」(2005年1月1日付読売新聞社説)
要点をまとめると、以下のようになる。
- 消費税率は15%を目指す。
- 食料品、新聞、書籍などには軽減税率を適用。
- 法人税の引き下げを目指す。そのためにも財政に余裕を持たせるべき。
- 消費税率を上げて財政を再建しつつ、経済成長のために法人税は減税。
続いて朝日新聞である。
「消費増税なしに安心は買えぬ」「必需品は軽減税率、コメなどは非課税に」(2007年12月9日付朝日新聞社説)
「消費税率の水準は他の増税との兼ね合いで決まってくるが、中福祉中負担の欧州諸国は、仏19.6%、独19%、英17.5%と、2けた台の後半まで上げてきた。初めに書いた福祉の財政需要増20兆円は、消費税にして6~7%にあたる。いずれは消費税が10%台になることを覚悟するしかあるまい。」(2007年12月9日付朝日新聞社説)
「消費税を引き上げるだけではなく、直接税も強化していく。」「バブルの時代に課税を緩和した相続税も見直して、格差が次の世代へ過度に引き継がれて社会が階層化しないようにすることが大切だ。」(2007年12月9日付朝日新聞社説)
「20年後を見すえ、福祉の水準とそのための負担をパッケージにして示し、国民の納得を得る。政権をめざす政党は、それを選挙で競うべきだ。」(2007年12月9日付朝日新聞社説)
要点をまとめると、以下のようになる。
- 消費税は10%台。
- 軽減税率の創設、非課税品目の拡大。
- 直接税も強化。
- 政党は増税策を選挙で競え。
次は毎日新聞。
「消費税引き上げ 支えるに足る政府を築け」「いつどのように消費税を上げるのか、それによってどれだけの社会サービスが供給されるのか。こうしたことを丁寧に示していくことが、租税国家を再興する手続きとして欠かせない。」(2007年11月21日付毎日新聞社説)
「国民は明確な根拠があれば、消費税率引き上げに単純に反対ではないことは各種の世論調査などからもうかがえる。その前提は政府が信頼できるもので、社会サービスの満足度も高いことである。」(2007年10月19日付毎日新聞社説)
「当然、消費税率引き上げを避けるわけにはいかない。」(2007年10月19日付毎日新聞社説)
要点をまとめると、以下のようになる。
- 消費税率引き上げは不可避。
- 消費税増税の工程や、それを原資とした社会サービスについての丁寧な説明が必要。
- 信頼できる政府、満足度の高い社会サービスの提供があれば、国民は消費税増税を支持する。
続いて産経新聞。
「社会保障費は医療を中心に急増する。なのに目前に迫る基礎年金の国庫負担割合引き上げ財源の手当てさえできていない。歳出(受益)を緩めて歳入(増税)を考えないなら、破綻(はたん)は時間との競争になる。子供でも分かる理屈だが、与野党は動こうとしない。」(2008年1月4日付産経新聞社説)
「政府税調は安定的財源として消費税がふさわしいとし、引き上げの必要性を示したが、税率も時期も明記し得なかった。むしろ、踏み込んだのは財革研で、社会保障目的税化の方向を明確にしたうえ、2010年代半ばまでに少なくとも税率10%とした。財革研は党政調会長の私的研究会で党議決定とはならないが、財政再建の議論が一歩進んだことを評価したい。与謝野馨財革研会長は党税調の小委員長でもある。党税調でもこの方向付けを明確にしてほしい。」(2007年11月22日付産経新聞社説)
「基礎年金国庫負担割合2分の1引き上げに必要な2・5兆円の財源は、年末までに結論を得ねばならない。昨年の骨太方針が明記した『新たな安定的財源』は消費税以外にあるまい。税率にして1%である。」(2007年10月29日付産経新聞社説)
要点をまとめると、以下のようになる。
- このままでは財政破綻は時間の問題。
- 自民党財政改革研究会が示した税率10%を評価。
- 新たな安定的財源は消費税以外にない。
最後に日本経済新聞。
「特定業種に恩恵が及ぶ租税特別措置を極力整理し、課税所得の範囲を広げて、国際的な潮流である法人課税の実効税率引き下げにつなげることが重要だ。」(2007年12月14日付日本経済新聞社説)
「深刻な財政を考えれば、いずれは消費税の増税は避けられない。基礎年金の財源を全額税でまかなう方式の議論も始まった。だが政府のスリム化や経済成長の努力をしてこそ増税が受け入れられる素地もできる。」(2007年11月21日付日本経済新聞社説)
「成長と歳出抑制が消費増税の大前提だ」(2007年11月21日付日本経済新聞社説)
要点をまとめると、以下のようになる。
- 国際的な潮流にあわせ、法人税の減税が重要。
- 将来的には消費税増税は不可避。
- 歳出削減や経済成長政策の実施で消費税増税が可能。
どの新聞も論法はほとんど同じ。「財政が危機的な状況だ→財政再建には消費税増税しかない」という意見である。読売、朝日、産経が特に強硬派で、二桁の税率を主張している。また、これに加えて、読売と日経は国際競争力強化のため法人税減税を主張している。
消費税増税を主張する各紙とも歳出削減を主張しているが、在日米軍駐留経費や在日米軍再編費用の過大な日本側負担(※1、2)については、及び腰になっている。読売新聞に至っては、いわゆる「思いやり予算」を絶賛(※3)している。
※1・・アメリカ国防総省の年次報告書『共同防衛に対する同盟国の貢献度』によると、2002年度の日本の米軍駐留経費負担額は44億1134万ドルとなっている。
※2・・読売新聞の報道によれば、日本側の負担試算額は1兆8627億円となっている。「在日米軍再編の費用負担に関する防衛庁の試算が30日、明らかになった。国内分の負担総額は1兆1867億円で、在沖縄海兵隊のグアム移転の日本側負担分60億9000万ドル(2006年度予算の換算レートで6760億円)を加えると、1兆8627億円となる。」(2006年10月1日付読売新聞)
※3・・「在日米軍の駐留経費負担は、日米同盟を堅持し、日本とアジアの平和と安全を確保するために不可欠なコストだ。数十億円程度の削減で日米関係全体をきしませるのは、得策ではあるまい。」(2007年12月18日付読売新聞社説)
親米一途な読売・産経はもとより、日経(※4)や毎日(※5)、さらには朝日までも在日米軍再編費用の日本側負担に反対していない(※6)。
※4・・「ポスト小泉が誰になるにせよ、在日米軍再編の実行は重要課題である。」(2006年5月31日付日本経済新聞社説) 、「機動的な米軍の存在には紛争抑止機能がある。基地提供でそれを支えるのは同盟国の責任であり、日本自身の安全保障のためでもあるが、政治による丁寧な説明が必要なのは論を待たない。」(2006年5月3日付日本経済新聞社説)
※5・・「小泉首相は9月には政権を次期首相に引き継ぐ。残された4カ月でどこまで再編を進めることができるのか。首相はリーダーシップを発揮し、内閣が一丸となり実施方針に沿った再編を着実に進める態勢を作らねばならない。それが首相の最低限の責任だ。」(2006年5月31日付毎日新聞社説)
※6・・「他国の領土にその国の基地をつくる資金を出すのは異例だ。それでも、沖縄の重荷を減らせるのなら、日本がある程度の財政負担をするのはやむをえまい。しかし、その場合でも、積算根拠をきちんと示し、財政的な見通しを立てることが最低の条件である。(2007年5月24日付朝日新聞社説)
読売、朝日、毎日、産経、日経が消費税増税で一致している姿は、何とも不気味だ。