2009年3月22日

定額給付金と朝日・毎日

先頃決まった定額給付金の交付を朝日新聞と毎日新聞が痛烈に批判している。

「2兆円もの巨額の税金の使い方として果たして妥当なのか。大きな論議を巻き起こした定額給付金が結局、支給されることになった。」「苦しい生活の中、給付金が届くのはありがたいと、支給を心待ちにしている人も多い。ただ、それはこの政策の是非とは別な話だ。同じ2兆円を使うなら、急増する失業者への手当てなど、真に助けを必要とするところに振り向けてほしい。それが国民の率直な思いに違いない。」(2009年3月5日付朝日新聞社説)

これはもちろん一つの意見として尊重されるべきものだが、高速道路利用者(ETC搭載車限定)のために注ぎ込む巨額の税金について、何ら言及がない(※)のは解せない。土休日の地方の高速料金が一部を除き上限1000円になるなど、高速道路利用者に対して至れり尽くせりの大盤振る舞いのために2年で5000億円もの税金が使われる。これとは別に10年間で2兆5000億円を注ぎこむ料金割引(深夜割引、通勤割引等)も実施中である。

※少なくとも社説においては今日(3月22日)まで言及がない。

高速道路利用者が真に助けを必要とする人々であるとは考えづらい。高速道路利用者への大盤振る舞いは、真に困窮している人々には直接的な助けにはならないことは明白だ。5000億円もの税金は真に困窮している人々のためにこそ使うべきだ。しかし、朝日新聞は定額給付金を批判することしか頭にないので、そのような論説を展開しない。残念なことだ。

毎日新聞の批判はもっと厳しい。

「定額給付金について毎日新聞は、目的も効果も不明確な究極のバラマキ策であり、同じ2兆円を使うなら別の使い道を検討すべきだと再三指摘してきた。」(2009年3月5日付毎日新聞社説)

同じ「バラマキ」でも高速道路利用者への大盤振る舞いを批判しない(※)ことは朝日新聞と共通している。同じ「バラマキ」なら、貧困者や失業者の手にも渡る定額給付金の方が人道的・良心的である。しかし、毎日新聞も朝日新聞同様、このような視点が全くない。憂うべき事態と言えよう。

※「休日だけでトラックなど大型車は対象外だとしても、料金引き下げは歓迎すべきことなのかもしれない。」(2009年3月22日付毎日新聞社説)

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2009年3月 8日

臓器移植と産経・読売

臓器移植推進派の産経新聞と読売新聞が内閣府の臓器移植に関する世論調査の結果を結果を基に論説を展開している。

「臓器移植法 早期改正は世論の大勢だ」「内閣府が世論調査したところ、54・3%が『ドナー(臓器提供者)が拒否していなければ、家族の同意で提供できる』との考えを支持した。2年前の前回調査より6・2ポイントの増加で、初めて50%を超えた。」「臓器移植に日本社会の理解が深まっている。家族の同意で提供できる改正臓器移植法案を国会は早急に審議し、成立させるべきだ。」(2008年11月13日付産経新聞社説)

産経新聞によれば、54.3%の支持を得ただけで、それは「世論の大勢」だという。あまりにも強引だ。さらに産経は「臓器移植に日本社会の理解が深まっている」という。それでは、臓器提供の意思表示を明確に示している人はどれだけいるだろうか。産経はこれについて一切記さない。それはなぜか。臓器移植推進派にとって非常に都合の悪い数値が内閣府の世論調査の結果で示されているからだ。

同調査によれば、臓器提供意思表示カードなどを持っている人の割合はわずか8.4%。持っていない人の割合は91.6%である。前者の割合は数年前から大幅に増える気配はない。その上、持っている人の内、何も記入していない人が49.7%、臓器を提供しない意思を記入している人が1.3%となっており、臓器提供意思表示カードなどを持っている上、臓器を提供する意思を示している人は5%にも満たない状況だ。結論は明らかだろう。他人はどうあれ、自分が臓器移植の当事者になるのはお断りというのが「世論の大勢」だ。

一方、国際圧力を錦の御旗にしているのが読売新聞だ。

「米国では毎年数千例、欧州の主要国でも年間数百例の脳死移植があるのに対して、あまりにも少ない。このため、幼児から大人まで大勢の日本人が移植目的で海外に渡航している。」「こうした日本の現状は臓器売買にもつながる「移植ツーリズム」と批判されている。世界保健機関(WHO)は5月の総会で、臓器移植は自国で完結させるべきだ、との指針を決定する見通しだ。」「国際社会の我慢が、10年の節目に限界を迎えた、ということだろう。日本がこの状況を続けることは、もうできなくなる。」(2009年2月27日付読売新聞社説)

これに対しては、以前私が書いた文章が答えになり得る。

日本国内では、脳死状態における臓器提供を希望しない人が大多数であり、これは日本の伝統や文化、あるいは「日本人としてのアイデンティティー」によるものだ。この状態を覆すことは読売新聞が嫌う「日本の伝統や文化の否定」になりかねない。また、他国の臓器移植が伝統や文化、アイデンティティーに立脚しているものであるならば、日本としてどうこうできるものではない。そうした国が日本人の海外移植を受け入れるかどうかは、その国の内政問題だ。(脳死移植と読売新聞)

前述の世論調査については「内閣府の世論調査では、欧米並みの同意基準で脳死移植を認めてもよい、とする人が半数を超えている」と記すにとどまる。さすがに産経のように「世論の大勢」とまでは書いていない。ただ、臓器提供意思表示カードなどを持っている人の割合はわずか8.4%にとどまったことについて何ら記さないことについては共通している。

かつて読売は臓器提供意思表示カードの普及を強く主張(※)していたが、あまりの普及率の悪さに諦めたようである。その代わり、本人の意思が不明の場合、家族が承諾すれば臓器提供を認めるという欧米基準を日本でも認めるように主張する論法を強化している。たが、そうなったとしても臓器提供(特に脳死状態における臓器提供)が画期的に増えることはあるまい。前述したように自分が臓器移植の当事者になるのはお断りというのが「世論の大勢」だからだ。その場合、臓器移植推進派がさらに危険な論法を用いてくることもあるかもしれない。例えば、本人の意思表示がない場合は臓器提供を認めたものとみなしてしまう「沈黙の同意」である。警戒する必要がある。

※「意思表示カードは自治体の窓口や郵便局などで配布されているが、入手方法を知らない人も増えている。脳死移植の前提となる意思表示カードの普及に、国や自治体はもっと努力すべきである。」(2002年10月20日付読売新聞社説)

参考リンク
脳死は人の死ではない

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2009年2月16日

宮内義彦氏を称賛する朝日新聞

宮内義彦氏を称賛する朝日新聞

1月18日付の朝日新聞が社説で宮内義彦氏を擁護・称賛している。

「宮内氏は規制緩和や民営化を推進してきた。官僚任せでは構造改革が進まないため、当時の政権が要請したものだ。過去の経歴や言動を後になってあげつらうのでは、政府に協力する民間人はいなくなってしまう。」

市場原理主義に傾倒する朝日新聞らしい社説だ。宮内氏は、国家・国民のため規制緩和や民営化を推進してきたと言いたいのだろう。しかし、国家・国民のためとは言い難い規制緩和や民営化が行われてきたのも、また事実である。昨今批判されている労働者派遣制度の規制緩和はその一例である。

宮内氏が議長を務めた総合規制改革会議や規制改革・民間開放推進会議は、一貫して企業の利益を拡大させる政策を提案してきた。そのうえ、改革の結果として生じる弊害には何らの配慮も示さなかった。これは当然予想される結末であった。これらの会議の委員の六割が民間企業の経営者で占められていたからだ。企業経営者が自社や自業界の利益を第一に考えるのは当然のことであり、企業経営者を責めることはできない。

問題は、政府が、企業の利益を拡大させる総合規制改革会議や規制改革・民間開放推進会議の提案をそっくりそのまま政策として採用していることである。もっと言えば、これらの会議の委員に多数の企業経営者を任命することが間違っているのである。企業経営者の意見を聞くことも必要だが、全委員の過半数を占めるほど任命することは根本的に間違っている。

参考資料
総合規制改革会議委員名簿
規制改革・民間開放推進会議委員名簿(PDFファイル)
規制緩和と報道機関
六本木ヒルズ礼賛論への批判

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2009年1月19日

堀江「被告」報道のおかしさ

昨年12月のことだが、堀江貴文・元ライブドア社長が、自身が起こしていた民事訴訟で勝訴したとの報道があった。それを報じた産経新聞の記事(iZaへの外部リンク)を以下に示す。

「違法カジノで賭博をしていたとする『週刊現代』の記事で名誉を傷付けられたとして、ライブドア元社長、堀江貴文被告(36)=証券取引法違反罪で上告中=が発行元の講談社などに5000万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が24日、東京地裁であった。広谷章雄裁判長は『堀江被告が違法な賭博をしていたことを裏付ける証拠はない』と名誉棄損を認め、講談社側に400万円の支払いを命じた。」

「広谷裁判長は『違法カジノで賭博したことを否定する堀江被告の証言に不自然な点はない』などと指摘。記事が真実であるとする証明がないと結論付けた。」

いかがだろうか。非常にわかりにくい記事になっていると思う。この書き方では、この裁判で堀江氏が「被告」になっているという錯覚すら抱きかねない。この民事訴訟は、堀江氏が「原告」として、「被告」の講談社を訴えているものであり、当然のことながら判決文にも「堀江被告」などという表現はない。

産経新聞が「堀江被告」という表現に固執したために非常にわかりにくい記事になってしまったということだ。そもそも、この民事訴訟は、堀江氏が現在係争中の刑事訴訟と何ら関係がないものであり、「堀江被告」という表現をすることには何ら必然性はない。

人権尊重の点から考えて、「堀江被告」という表現は、堀江氏が現在係争中の刑事訴訟に関する記事に限られるべきだ。産経新聞によれば、同紙記者は個人の名誉と人権を重んじているようだ。であるなら、このような記事は直ちに訂正するべきであろう。

新聞倫理綱領・(産経新聞)記者指針(産経新聞への外部リンク)

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2008年2月10日

在京六紙が農業市場開放で一致

以前に専門的・技術的分野とは評価されていない分野における外国人労働者の受け入れに在京六紙(朝日、読売、毎日、産経、日経、東京)のすべてが賛成している事実を紹介したが、今回は、農業市場の開放で在京六紙が一致している事実を紹介する。各紙ともグローバリズム一辺倒であり、「保守」であるはずの産経や読売までもがグローバリズムに傾倒する様は見るに堪えない。

「各国による経済連携協定(EPA)の締結競争などに立ち遅れないためには、農業分野での市場開放が欠かせない。それには農業の生産性向上が肝要だ。」(2007年9月18日付読売新聞社説)

「このままでは、自由化の流れに取り残され、将来、各国の市場から日本製品が閉め出される恐れも出てくるだろう。」(2004年1月7日付読売新聞社説)

「自由貿易のおかげで豊かな暮らしを手に入れた日本は、ここで踏ん張らねばならない。農産物の高率関税を守ろうとするあまり、ラウンドの崩壊に手を貸すようなことがあってはならない。」(2006年7月3日付朝日新聞社説)(※「ラウンド」は世界貿易機関のドーハ・ラウンドのこと)

「日本の食糧自給率は、先進国では異常に低い。農業がなくなっていいと思う国民はいないだろう。だからといって、高関税などで守るだけではひ弱なままだ。ようやく緒に就いた農業改革を着実に実行し、痛みをこらえつつ競争力のある農業を育てるしかない。」「農業分野でつまずき、ラウンドが崩壊に向かえばどうなるだろうか。貿易相手国の工業製品の関税引き下げ、金融、運輸といったサービス分野の市場開放などで合意できない時に、日本が失う利益は計り知れない。」(2005年12月22日朝日付新聞社説)(※「ラウンド」は世界貿易機関のドーハ・ラウンドのこと)

「日本政府も農業を中心に、自由貿易の前進に資する提案をすべきである。法外な保護を外していくことは、世界の自由貿易体制を維持・推進していく上で、欠かすことはできない。」「農業貿易の自由化で大胆な提案を行うべきである。」(2004年2月17日付毎日新聞社説。世界貿易機関のドーハ・ラウンドについて)

「食料自給率をなるべく維持するのは大切だが、それは農業の担い手の確保、農地拡大による生産性向上などを通じて実現すべきであり、輸入の制限に頼るのは弊害が大きい。むしろ多くの国との経済連携協定のなかで凶作のときの食料供給を約束してもらえば、安心ともいえる。」(2007年1月6日付日本経済新聞社説)

「通商政策の構造改革も急務である。日本はこれまで国内農業保護のために農産物市場の開放を遅らせ、それが二国間の自由貿易協定(FTA)交渉や多国間の通商交渉でも日本が自由貿易を主導できない大きな原因になってきた。これまで通商政策に大きな影響力を及ぼしてきた農林族議員や農協などの圧力団体の抵抗を排し、日本の真の国益に合致する通商政策を進めるべきだろう。」(2005年10月16日付日本経済新聞社説)

「5年越しのドーハ・ラウンドは、農業のほかにサービス自由化、知的財産保護など7分野で新ルール作りを目指す壮大な国際交渉だ。成功すれば日本全体にとっての経済的利益は大きい。世界経済にも寄与する。日本政府は国内農業の競争力強化や被害農家対策などに留意しつつ、守りや抵抗だけでなく、痛みを伴う譲歩案を用意し、積極的な攻めの姿勢で交渉に臨むときを迎えたといえよう。」(2007年2月3日付産経新聞社説)

「必要なのが、FTAの『拡大』である。韓国とは行き詰まったままだが、インドネシアとは四月から、ASEAN全体とも七月から交渉が始まっている。チリ、インド、スイス、豪州とも研究・検討中だ。東南アジアをはじめ各国とのFTA戦略を急ピッチで進める中国や韓国に後れをとってはいられない。」(2005年9月5日付産経新聞社説)

「農業自由化の遅れのために、二国間の自由貿易協定(FTA)交渉も思うように進展しない。結果として日本全体でみると、消費者が高い農産品を買わされるだけでなく、企業が貿易や投資面で不利に扱われる弊害も生じている。」(2005年10月25日付東京新聞社説)

「農業分野の市場開放をどう進めていくのか、日本自身の決断が不可欠だ。」(2005年8月4日付東京新聞社説)

各紙の論調はほとんど同じ。消費税増税以上の一体感すら感じられる。要点をまとめると、以下のようになる。

  • 農業分野の市場開放を推進せよ。
  • 農業の生産性向上で国際競争力を強化せよ。
  • 農業分野に固執すると、工業製品など他分野に悪影響を及ぼす。
  • 自由貿易体制は素晴らしい。

どの新聞も一様に自由貿易の推進を主張し、FTA(自由貿易協定)なども賛美する。自由貿易体制の弊害は全く意に介さない。「愛国」を強調する読売や産経も、早く「地球市民」になりたいのだろうか。

農業の生産性向上で国際競争力を強化できるなどとする意見があるが、生産性向上が実現したとしても、広大な国土を持つオーストラリアやアメリカ、人件費が格段に安い中国や東南アジア諸国には対抗できず、「焼け石に水」状態となる。

何より問題なのは、各紙に食料安全保障の観点が全くないことである。日経に至っては、他国から供給の約束を取り付けていれば安心などという有様である。世界的な食料危機が起きたとき、そのような約束は反故にされる(「ないものとする」の意)可能性が強い。どの国も国益が第一だからである。

農業分野の市場開放が無制限に進めば、食料自給は壊滅するであろう。読売や産経は、「愛国者」であることを自認するならば、直ちに方向転換するべきだ。

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2008年2月 4日

新聞界は消費税率アップの大合唱

近頃、消費税率アップを声を大にして唱える新聞が増えてきた。在京六紙のうち、読売、朝日、毎日、産経、日経が消費税率アップ賛成派で、唯一、東京新聞は賛否を明確にしていない。

賛成派の急先鋒は、やはり読売新聞である。

「老いも若きも、広く薄く、福祉財源を負担し合うしかない。そうすれば高齢者層が大きくとも、負担の重さは各世代に幅広く分散される。消費税率を引き上げることによって、必要な財源を確保すべきである。引き上げは段階的に行うとしても、いずれは、欧州諸国の最低水準である15%程度は検討する必要があろう。」(2008年1月11日付読売新聞社説)

「成長率上昇による税収増という、実現性が不確かな要素だけをあてにできる状態ではない。増え続ける社会保障費を考えても、消費税率上げを中心にした財政健全化策の策定は、待ったなしだ。成長政策も問われる。日本企業の国際競争力向上の観点からは、法人税実効税率の引き下げなども課題になる。その実現のためにも、財政的余力を確保する必要があろう。」(2008年1月5日付読売新聞社説)

「もちろん、消費税を大幅に引き上げる際には、食料品など日常的生活必需品については軽減税率の対象とするなどの配慮は要る。新聞、書籍を始めとする知識文化的商品も欧米並みに軽減措置を考える必要がある。」(2005年1月1日付読売新聞社説)

要点をまとめると、以下のようになる。

  • 消費税率は15%を目指す。
  • 食料品、新聞、書籍などには軽減税率を適用。
  • 法人税の引き下げを目指す。そのためにも財政に余裕を持たせるべき。
  • 消費税率を上げて財政を再建しつつ、経済成長のために法人税は減税。

続いて朝日新聞である。

「消費増税なしに安心は買えぬ」「必需品は軽減税率、コメなどは非課税に」(2007年12月9日付朝日新聞社説)

「消費税率の水準は他の増税との兼ね合いで決まってくるが、中福祉中負担の欧州諸国は、仏19.6%、独19%、英17.5%と、2けた台の後半まで上げてきた。初めに書いた福祉の財政需要増20兆円は、消費税にして6~7%にあたる。いずれは消費税が10%台になることを覚悟するしかあるまい。」(2007年12月9日付朝日新聞社説)

「消費税を引き上げるだけではなく、直接税も強化していく。」「バブルの時代に課税を緩和した相続税も見直して、格差が次の世代へ過度に引き継がれて社会が階層化しないようにすることが大切だ。」(2007年12月9日付朝日新聞社説)

「20年後を見すえ、福祉の水準とそのための負担をパッケージにして示し、国民の納得を得る。政権をめざす政党は、それを選挙で競うべきだ。」(2007年12月9日付朝日新聞社説)

要点をまとめると、以下のようになる。

  • 消費税は10%台。
  • 軽減税率の創設、非課税品目の拡大。
  • 直接税も強化。
  • 政党は増税策を選挙で競え。

次は毎日新聞。

「消費税引き上げ 支えるに足る政府を築け」「いつどのように消費税を上げるのか、それによってどれだけの社会サービスが供給されるのか。こうしたことを丁寧に示していくことが、租税国家を再興する手続きとして欠かせない。」(2007年11月21日付毎日新聞社説)

「国民は明確な根拠があれば、消費税率引き上げに単純に反対ではないことは各種の世論調査などからもうかがえる。その前提は政府が信頼できるもので、社会サービスの満足度も高いことである。」(2007年10月19日付毎日新聞社説)

「当然、消費税率引き上げを避けるわけにはいかない。」(2007年10月19日付毎日新聞社説)

要点をまとめると、以下のようになる。

  • 消費税率引き上げは不可避。
  • 消費税増税の工程や、それを原資とした社会サービスについての丁寧な説明が必要。
  • 信頼できる政府、満足度の高い社会サービスの提供があれば、国民は消費税増税を支持する。

続いて産経新聞。

「社会保障費は医療を中心に急増する。なのに目前に迫る基礎年金の国庫負担割合引き上げ財源の手当てさえできていない。歳出(受益)を緩めて歳入(増税)を考えないなら、破綻(はたん)は時間との競争になる。子供でも分かる理屈だが、与野党は動こうとしない。」(2008年1月4日付産経新聞社説)

「政府税調は安定的財源として消費税がふさわしいとし、引き上げの必要性を示したが、税率も時期も明記し得なかった。むしろ、踏み込んだのは財革研で、社会保障目的税化の方向を明確にしたうえ、2010年代半ばまでに少なくとも税率10%とした。財革研は党政調会長の私的研究会で党議決定とはならないが、財政再建の議論が一歩進んだことを評価したい。与謝野馨財革研会長は党税調の小委員長でもある。党税調でもこの方向付けを明確にしてほしい。」(2007年11月22日付産経新聞社説)

「基礎年金国庫負担割合2分の1引き上げに必要な2・5兆円の財源は、年末までに結論を得ねばならない。昨年の骨太方針が明記した『新たな安定的財源』は消費税以外にあるまい。税率にして1%である。」(2007年10月29日付産経新聞社説)

要点をまとめると、以下のようになる。

  • このままでは財政破綻は時間の問題。
  • 自民党財政改革研究会が示した税率10%を評価。
  • 新たな安定的財源は消費税以外にない。

最後に日本経済新聞。

「特定業種に恩恵が及ぶ租税特別措置を極力整理し、課税所得の範囲を広げて、国際的な潮流である法人課税の実効税率引き下げにつなげることが重要だ。」(2007年12月14日付日本経済新聞社説)

「深刻な財政を考えれば、いずれは消費税の増税は避けられない。基礎年金の財源を全額税でまかなう方式の議論も始まった。だが政府のスリム化や経済成長の努力をしてこそ増税が受け入れられる素地もできる。」(2007年11月21日付日本経済新聞社説)

「成長と歳出抑制が消費増税の大前提だ」(2007年11月21日付日本経済新聞社説)

要点をまとめると、以下のようになる。

  • 国際的な潮流にあわせ、法人税の減税が重要。
  • 将来的には消費税増税は不可避。
  • 歳出削減や経済成長政策の実施で消費税増税が可能。

どの新聞も論法はほとんど同じ。「財政が危機的な状況だ→財政再建には消費税増税しかない」という意見である。読売、朝日、産経が特に強硬派で、二桁の税率を主張している。また、これに加えて、読売と日経は国際競争力強化のため法人税減税を主張している。

消費税増税を主張する各紙とも歳出削減を主張しているが、在日米軍駐留経費や在日米軍再編費用の過大な日本側負担(※1、2)については、及び腰になっている。読売新聞に至っては、いわゆる「思いやり予算」を絶賛(※3)している。

※1・・アメリカ国防総省の年次報告書『共同防衛に対する同盟国の貢献度』によると、2002年度の日本の米軍駐留経費負担額は44億1134万ドルとなっている。

※2・・読売新聞の報道によれば、日本側の負担試算額は1兆8627億円となっている。「在日米軍再編の費用負担に関する防衛庁の試算が30日、明らかになった。国内分の負担総額は1兆1867億円で、在沖縄海兵隊のグアム移転の日本側負担分60億9000万ドル(2006年度予算の換算レートで6760億円)を加えると、1兆8627億円となる。」(2006年10月1日付読売新聞)

※3・・「在日米軍の駐留経費負担は、日米同盟を堅持し、日本とアジアの平和と安全を確保するために不可欠なコストだ。数十億円程度の削減で日米関係全体をきしませるのは、得策ではあるまい。」(2007年12月18日付読売新聞社説)

親米一途な読売・産経はもとより、日経(※4)や毎日(※5)、さらには朝日までも在日米軍再編費用の日本側負担に反対していない(※6)。

※4・・「ポスト小泉が誰になるにせよ、在日米軍再編の実行は重要課題である。」(2006年5月31日付日本経済新聞社説) 、「機動的な米軍の存在には紛争抑止機能がある。基地提供でそれを支えるのは同盟国の責任であり、日本自身の安全保障のためでもあるが、政治による丁寧な説明が必要なのは論を待たない。」(2006年5月3日付日本経済新聞社説)

※5・・「小泉首相は9月には政権を次期首相に引き継ぐ。残された4カ月でどこまで再編を進めることができるのか。首相はリーダーシップを発揮し、内閣が一丸となり実施方針に沿った再編を着実に進める態勢を作らねばならない。それが首相の最低限の責任だ。」(2006年5月31日付毎日新聞社説)

※6・・「他国の領土にその国の基地をつくる資金を出すのは異例だ。それでも、沖縄の重荷を減らせるのなら、日本がある程度の財政負担をするのはやむをえまい。しかし、その場合でも、積算根拠をきちんと示し、財政的な見通しを立てることが最低の条件である。(2007年5月24日付朝日新聞社説)

読売、朝日、毎日、産経、日経が消費税増税で一致している姿は、何とも不気味だ。

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2008年1月27日

財政規律と毎日新聞

毎日新聞が1月22日付の社説で「ばらまき」を批判し、財政規律の大切さを主張している。

「景気対策の名の下に築かれた赤字国債の山を見て、私たちは財政規律の大切さを学んだのではなかったのか」(1月22日付毎日新聞社説)

興味深いのは、同じ日の別の社説で、サブプライム問題を解決するため、アメリカ政府は公的資金を投入すべしと主張しているところだ。

「サブプライム問題の解決が優先されるべきで、そのためには、公的資金の投入など、米政府は早期に抜本的な措置をとる必要がある」(1月22日付毎日新聞社説)

公的資金の投入は毎日新聞の一貫した主張であり、1月8日の社説でも同様の主張をしている。

「サブプライムローン問題を抜本的に解決するには、米政府が公的資金を投入して不良債権を買い上げ、金融市場から隔離することが必要だ」(1月8日付毎日新聞社説)

莫大な不良債権を公的資金で買い取ることは財政規律の破綻を意味する。「財政規律の大切さ」は「お国」によって違うというのが毎日新聞の意見なのであろう。

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2008年1月 8日

不動産証券化と読売新聞

読売新聞が不動産の証券化について、以下のように論評をしている。

「海外を中心に、証券化商品への投資などで収益を上げる戦略も、大きなリスクを伴うことが、サブプライムローン問題で明らかになった。」(2007年11月23日付読売新聞社説)

「サブプライムローン関連証券のような証券化商品は、リスクの分散を狙って開発された。それが、『誰がどのくらい損失を抱えているのかわからない』と、金融システムの混乱要因となっている。新たな金融商品や金融技術が開発されれば、それに伴って新しいリスクが生まれる。」(2007年11月11日付読売新聞社説)

まるで他人事のような論評だ。しかし、不動産の証券化をまるで「打ち出の小槌」のごとく絶賛してきたのは当の読売新聞である。あまりにも無責任だ。

「担保不動産や貸出債権の証券化と、その流通市場整備にも本格的に取り組まなければならない。担保不動産や債権が証券化され流通すれば、銀行が企業を倒産させなくても不良債権の直接処理はできる。銀行に戻った金が再び融資に回され金融も正常化する。」「土地の流動化は経済活性化の起点でもある。譲渡益課税や登録免許税の減免など、不動産取引への税コスト引き下げが必要だ。米国の銀行は八〇年代の不良債権危機を、証券化とリストラで克服し、復活した。」(2001年3月14日付読売新聞「デフレ阻止へ緊急提言」)

「米国では、住宅ローンの半分、不動産融資の15%が証券化され、売り出されているが、日本では実績が乏しい。証券化商品を郵便貯金や簡易保険資金の投資対象とするなど公的な『呼び水』が必要だ。」「米国の大銀行も八〇年代後半、不動産・中南米融資の焦げつきで倒産の危機に追い込まれた。日本の金融機関の支援で生き延びた銀行もある。だがその後、果敢なリストラや合併で見事に再生し、バブルの後始末に追われる日本の銀行をしり目に、さらなる巨大合併に挑んでいる。シティコープとトラベラーズの合併で、資産七千億ドル、百か国に三千の拠点を持つ世界最大の総合金融機関が誕生する。バンカメリカもネーションズバンクと合併する。」「十年前まで傷だらけだった銀行とは思えない。日本の銀行も、国内、海外資本との大型合併、提携を含めて、素早く、大胆に変身しないと脱落は必至だ。」(1998年4月25日付読売新聞「あすでは遅すぎる・経済危機7つの提言」)

御覧のとおり、読売新聞は不動産の証券化を絶賛している。しかも、公的機関が証券化商品を購入すべきだとも言っている。にもかかわらず、今頃になって、「リスクが生まれる。」(2007年11月11日付読売新聞社説)「大きなリスクを伴う」(2007年11月23日付読売新聞社説)などと他人事のように言うのは納得できない。

読売新聞が絶賛したアメリカの銀行は、どこもかしこも青息吐息の状況だ。シティのサブプライムローン関連の損失は200億ドルに達する勢いで、アブダビ投資庁(アラブ首長国連邦)の75億ドルの出資を仰ぐに至るほどの有様だ。バンク・オブ・アメリカ(バンカメリカ)も、シティほどではないものの、サブプライムローン関連の損失は50億ドルを軽く超えている。「証券化」で復活したアメリカの銀行が、今度はその「証券化」で危機に陥るとは、何とも皮肉だ。

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2007年8月15日

保守派の「自虐」を問う

「自虐」と言うと左派勢力の専売特許のように思われているが、保守派にも「自虐」的な価値観が時折見られる。好例が湾岸戦争時の日本の対応についての批判であろう。

「インド洋での海上自衛隊の活動は11カ国に対して行われており、単なる『対米協力』ではない。ましてや『対米追随』ではない。国際協力なのだ。もし同法が葬られれば、テロとの戦いをつづける国際社会と日本の乖離(かいり)は広がり、信頼の損失は計り知れない。日本は、130億ドルを拠出しながら『少なすぎて遅すぎる』と感謝すらされなかった、湾岸戦争の外交的失敗を繰り返す愚を犯してはならない。」(2007年8月15日付産経新聞社説)

「10年前の湾岸戦争では、日本は最終的に130億ドルという巨額の資金協力を行った。戦争終結後には、海上自衛隊の掃海艇もペルシャ湾に派遣した。しかし、『小出し、後出し』だったため、米国などを失望させた。クウェート政府が米紙に出した感謝広告には、米国など約30の国名が並んだが、日本の名前はなかったという事実も忘れてはならない。」(2001年10月7日付読売新聞「世界の危機・日本の責任」緊急提言)

古今東西、資金力の多寡は、戦争の勝敗に大きな影響を与えている。湾岸戦争の是非はともかく、日本の巨額の資金援助は、多国籍軍の勝利に大いに貢献したことは間違いない。

産経新聞は言う。「感謝すらされなかった」と。しかし、それは感謝しなかったほうが無礼であると考えるのが自然だろう。なぜ、無礼者に抗議せず、多大な貢献をした日本を責めるのか。「自虐」もここに極まれりだ。

読売新聞も同様だ。礼を失した行動をしているのは、明らかにアメリカやクウェートである。アメリカやクウェートに対して、いかに日本が勝利に貢献したか、そしてアメリカやクウェートがいかに非礼であるかを説くべきである。それが真の愛国者(読売新聞がしきりに愛国心を説いているのは周知の通り)のあるべき姿である。

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2007年8月14日

日本経済新聞=社会主義者

日本経済新聞が2007年7月24日付のコラム『大機小機』で小沢一郎氏率いる民主党の政策を社会主義と断定、厳しく批判している。

「マニフェストから判断する限り、小沢民主党の路線は社会主義の色合いが濃いように見える。基礎年金部分の実質的な税方式への切り替え、中学卒業まで支給する子ども手当てと公立高校の無償化、高速道路料金の無料化など、これでもかというぐらいに社会主義的な政策が並んでいる。」(2007年7月24日付日経『大機小機』、著者は「眠り独楽」氏)

民主党の政策は、社会主義というより、資本主義社会の枠内での福祉国家的な色彩が強いと考えられるが、日経新聞の目には歳出を大幅に拡大させる政策は全て社会主義に映るのだろう。

ここで注目したいのは日経新聞の過去の主張である。実は、歳出を大幅に拡大させる政策を幾度となく主張していたのが日経新聞であった。日経新聞的な判断基準に従えば、日経新聞こそが「社会主義者」ということになる。

以下は、私が2005年9月10日に書いた論評からの再掲載である。

「歳出改革、ここで手を緩められない」「どの政党が政権を取ろうとも『小さくて効率的な政府』の実現は優先度の高い課題。」(2005年8月12日付日本経済新聞社説)

「財政再建ほど政治のリーダーシップが必要になる仕事はない。今後の選挙戦で、小さな政府に向けて、さらに具体的な選択肢を国民に示し議論を深めてほしい。」(2005年8月22日付日本経済新聞社説)

しかし、「小さくて効率的な政府」の役割からかけ離れた民間企業の救済を任務とする産業再生機構を評価していたのは日経である。あまりにも矛盾している。

「緊急避難としての一定の役割を果たしたと評価できる」(2005年3月31日付日本経済新聞社説)

また、日経は、1998年秋に、「日本経済再生計画」を発表、「銀行に大量の公的資金を注入すべきだ」と華々しく歳出拡大政策を打ち上げている。その「日本経済再生計画」とは、「大手銀行への資本注入」「法人税減税」「所得税の最高税率の引き下げ」等の改革を行った後、「小さな政府」に移行するというダイナミックなものだ。

1998年10月19日以降の日経の当該記事を見て頂ければわかることだが、日経が主張する「計画」は金持ちや銀行、大企業に有利なものばかりで、貧乏人を潤す政策は時限的特別減税などに限られている。そのうえ、「リストラ徹底条件に健全行の経営責任は一時猶予」(1998年10月20日付日本経済新聞)とまで言っているのだから、ひどい。

しかも、この「計画」は「小さな政府」を志向するそれまでの日経の主張を根底から覆す提言のオンパレードである。

「必要なキーワードの一つは、『自立』ではないだろうか。」「市場原理を重んじ、競争政策を基盤にした経済構造をつくり上げる必要がある。」(1998年2月1日付日本経済新聞社説)「金融社会主義に終止符を打たなければならない」(1996年8月4日付日本経済新聞社説) → 「金融機関に10兆円を超す公的資本注入」(1998年10月19日付日本経済新聞)

「公共投資を中心とする歳出削減は、それにぶら下がり既得権益を得てきた人々の必死の抵抗を呼ぶだろうが、それを克服できなければ、二十一世紀の地平は見えてこない。」(1997年5月8日付日本経済新聞社説) → 「都市再生など10兆円規模の公共投資上積み」(1998年10月19日付日本経済新聞)

日経新聞は民主党を批判する前に、自らの「社会主義」的な政策を自己批判するべきである。

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